キャリア

【医師のキャリア/転職】病院が新しいことを取り入れ続けるには何が必要か【訪問診療】

野末 睦
医療法人あい友会 理事長
野末 睦

「現状維持は退歩の始まり」


自分自身のことでも、また組織のことでも、まあまあうまくいくようになると、どうしてもその状態を維持しようとしてしまいがちです。

潜在意識でそのように感じ始めてしまうと、日々の会話や会議での発言などで、「前例がない」とか「その新しい取り組みのリスクがわからない」と話すようになり、結局実行しなくなります。

でも、これだけ世の中の変化が激しく、診療報酬制度もどんどん変化する時代においては、変化しないこと、新しいことを取り入れないことは、すなわち時代から取り残されるということです。

まさに「現状維持は退歩の始まり」です。

ただ、観念的にはわかっていても、実際に変化を取り入れていくことには、エネルギーが必要ですから、新しいことを取り入れ続けていくための仕組みを構築することが肝要です。

わたし自身は、2つの仕組みを取り入れました。

チャレンジし続けるための2つの仕組み


1つ目は毎月発行される病院広報誌「あまるめーる」の巻頭に「Something New in 余目病院」という連載欄を作り、自ら毎月、その月などに起こる、あるいはその前の月に起こった「何か新しいこと」を書き続けました。

新年号は、年初のあいさつを掲載したので、そのほかの月に、毎年11記事、10年以上書き続けて100以上の記事となりました。

新しく赴任した医師のこと、新たに購入した医療機器のこと、創傷ケアセンターなど新たに余目病院で開始した治療のこと、医療機能評価の受審など外部からの評価のこと― このようなことを書き続けました。

書き続けていると、その時の病院の変化スピードを実感できます。

何となく勢いがなくなってくると、書くことがなくて困るようになります。

自分では書くことが見つからなくなり、周囲の人に「何か書くことないかなあ?」と尋ねてみたりします。

上昇機運の時は、あれも書きたい、これも書きたいとなります。

このように、毎月20日ごろの原稿締め切りの時には、その時の状態をチェックすることができて、気合を入れなおすことができたのです。

在職中は幸い、毎月欠かさず掲載できたので、病院自体も変化し、発展し続けることができたのではないかと思います。

もう一つ心がけていたことは、よい変化をもたらすような情報を獲得する前向きな好奇心を持ち、実行していくことです。

毎朝の15分間で大きな変化を巻き起こす


情報を得るために、まずは常勤の医師との面談を定期的に行いました。

幸い、余目病院には全国から優秀な医師が集まってきていたので、それぞれなにか新しいものを持っていたり考えたりしていました。

そこで毎朝の15分間を常勤医との一対一の面談にあてて、その医師が考えている新規プロジェクトを掘り起こしていく努力をしました。

そして、そのプロジェクトが形になってくると、病院の広報部隊を動員して講演会を開催したり、前段でご紹介した病院広報の「Something New」コーナーで取り上げたりして、広報を推し進めていったのです。

コンセプトの形成、そして仕組みを作って、最終的に職員などへの委託を心掛けたのです。

余談ですが、この朝の15分間の面談は、各医師の病院への不満がたまって爆発する前に、それを聞き出すことができ、病院側と各医師との良好な関係を維持するためにも非常に役立ちました。

変化には、他者の力が必要


さらに、学会からの情報や、企業からのダイレクトメールについても注意を払うように努力しました。

この点で非常に大きな成果を挙げたのが、難治性の傷を治すことに特化した「創傷ケアセンター」の立ち上げとその発展です。

後ほどこの創傷ケアセンターについては特別に取り上げる予定ですが、このセンターが発展できたのは取り扱う疾患の特異性によるものも大きいのですが、むしろそれ以上に重要な点は外部からのコンサルテーションによる運営だったということだと考えています。

日本では、診療内容に関しても扱うコンサルテーションは皆無と言っても過言ではないかと思うのですが、その点でこの創傷ケアセンターは画期的でした。

やはり、どんなに優秀な人でも、ひとりで考えたり、実行したりすることには限界があります。

ですから、広く情報を集めて、いいと思うことは、多くの方の力を借りて、あるいは中心となる人物を決めて、任せ、実行していくことが、変化をもたらしていくキーポイントだと思います。

「病院が新しいことを取り入れ続けるには何が必要でしょうか?」への私的結論

常に新しいものを取り入れていくことが必要で、そのための仕組みづくり、情報収集が大事。そして外部組織も含めて、多くの人の協力を仰ぐことを心がけましょう。

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この記事を書いた人 野末 睦
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総合内科 消化器外科 日本在宅医療連合学会 認定専門医

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