【医師のキャリア/転職】医師に求められるリーダーシップとは【訪問診療】

院長・院長代行ブログ

病院で、あるいはその組織で、何か解決しなくてはいけない課題が持ち上がった時に、「よし。それは俺に任せておけ」と言って、院長や組織のリーダーが自ら乗り出して解決していき、そのことによって職員の尊敬を集め、強いリーダーシップを発揮していく手法は「ヒーロー型リーダーシップ」といいます。

このタイプのリーダーシップは、その組織が発展途上の時、危機を迎えた時などに、最初に取り入れるには最強の手法ではありますが、組織の規模が大きくなったり、組織自体が安定期に入った時には、むしろ破たんしやすいのも特徴です。


とかく、リーダーは「ヒーロー型」になりがちで、「どうだ。こんなふうに解決していくんだ。だから、これからもおれの判断に従うんだぞ」と自己陶酔の領域に入りがちです。

わたしが院長を務めていた庄内余目病院は、徳洲会グループの病院でした。

 

グループを率いていた徳田虎雄氏がALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹患しつつも、強いリーダーシップをとって、そして最後には、家族間の後継争いなどから露見した、公職選挙法違反などで、とても残念な状態になっているのは、皆さんご存知だと思います。

 

彼はまさに、ヒーロー型のリーダーでした。わたしは、そのリーダーシップに対して感じたことを院長在任中に、徳洲会の機関紙「徳洲新聞」に投稿したので、少し引用したいと思います。

職場文化とのギャップ(引用)

 

わたしが徳洲会に入り、庄内余目病院の院長になってからちょうど8年が経ちました。
この間、医師不足などで大変な時期が続いていますが、何とか乗り切ってきており、それなりの評価をしていただいているように感じています。


しかし、個人的なことをもう少しお話しすると、実は院長になって5年ほど過ぎたころからごく最近まで、わたしの心はあまりいい状態ではありませんでした。


疲れがたまっていたせいもあるかもしれませんが、それ以上に徳洲会の文化に漠然とした違和感を感じていたからだと思います。
それがボディーブローのようにわたしを蝕んでいたような気がします。


徳洲会は、3歳の弟さんを亡くしたという徳田理事長のつらい経験からスタートしています。

 

そして病院建設時の医師会との確執、衆議院選挙での壮絶な戦い、そして最近では修復腎移植を巡っての厚生労働省や移植学会との戦い。

 

そして、徳田理事長の著書の中に「頭の悪いやつほど成功する」があり、土日も働いて、無理な努力、無駄な努力、無茶苦茶な努力を期待し礼賛する文化。


このような徳洲会文化の中でがんばって、貢献していこうとすればするほど、そして徳洲会に深く関わろうとすればするほど、わたし自身の心の奥底のつぶやきとのギャップがどんどん拡大していったのです。

 

「自分には弟を亡くしたようなつらい経験は全然ないし、いつも幸せだった。
自分の頭はとってもいいと思うけど、そうだとすると成功しないのかも。
単身赴任なので、せめて週末くらいは家族とゆっくり過ごしたい。
でも徳洲会でがんばるには、こういう考えを押し殺してがんばらなければいけないのだろうか?」

 

表面上は前向きな院長を演じつつも、こころはさ迷い歩いて、いつのころからかいわゆるメンター(精神的な点で導いてくれる人)を探しまくる状態になっていました。

 

周囲には徳田理事長をメンターとして飛躍していく人がたくさんいましたが、理性的にはそうしたいと願いつつも、潜在意識ではどうしてもそれができなかったのです。

そんなわたしが少しずつ変わることとなった運命的な出会いがありました。
それは庄内空港でわたしに話しかけてきてくれた泉椿魚(いずみちんぎょ)さんとの出会いです。

 

先祖代々医師の家系に生まれた方ですが、現在は漂泊の人となって、福岡から2年ごとに住居を北に移し、ちょうど庄内の羽黒に移り住んできていた時にわたしに話しかけたのです。

 

そして彼はわたしに名刺を渡すときに、なにやら一生懸命選んでいました。
彼の名刺の裏には一枚一枚違う言葉が彼の直筆で書いてあり、その中からわたしにふさわしいものをわたしの表情などを子細に観察しながら渡してくれたのです。

 

そこには独特の墨字で「人生無師独悟のこころ大事」とありました。
飛行機の中でその言葉をじっと見つめ、わたしは溢れる涙を抑えることができませんでした。

 

徳田理事長をメンターとすることができない葛藤におびえ、かといってほかにいくら探してもこの人についていきたいという人が現れるわけでもなく、魂がさまよっている感じがしていたわたしに、とても大事な真理を教えてくれたのです。

 

「徳田理事長との違いはそのままでいい。それを受け入れていこう。」
それ以来、わたしは内面的に少しずつ変わっていきました。

 

今は「師はわたし自身である」と感じています。
そして今わたしが感じていることをいくつかの言葉で表すと
「豊かさは世界に溢れている。そしてわたしが自分自身の能力を最大限に発揮することが自分のためそして他者のためになる。

 

わたしは創造するために生まれてきたのであって、競争するために生まれてきたのではない。思考し、感謝の心を持って行動することが大事。

 

「これから求められるリーダーシップの形とは何でしょうか?」への私的結論

 

ヒーロー型リーダーシップは、ともすれば破滅への道を進みかねません。
自分自身でよく考えて、そして、周囲の人の意見を取り入れ、やる気を引き出していくのが、これからのリーダーシップです。