2024.07.02

がんと診断されたら。~苦悩を越え、治療を開始した患者さんの物語~

当クリニックの訪問診療では、多くのがん患者さんを診ていますが、残念ながらお亡くなりになり訪問が終了する場合がほとんどです。
しかし、嬉しいことに元気になって訪問が終了になる場合があります。
今回はそんなお話しをしたいと思います。

苦悩の期間〜訪問診療開始まで〜

Aさん(60代前半)は数年前より右乳房の腫瘤に気づき、近医で乳がんと診断されましたが、治療を受けずにいました。
その後腫瘤は大きくなり、出血、両足の浮腫みが出現してきました。
歩行も辛くなり、動くと息があがるようになりました。
Aさんはどうしても「病院は行きたくない、家で死んでしまいたい」と望み、娘さんもそれを尊重していました。
しかし、苦痛の軽減や最終的な場面を想定すると医療の介入が必要です。
娘さんもいよいよ困り、当クリニックに相談があり急遽訪問することとなりました。
乳がんは大きくなれば自分でも気づきますが、恐怖が先に立ち病院受診をしない方が時々おります。
実際、病院を受診せず最終的に自宅でお看取りをした方を何人も経験しています。

死への覚悟から治療へ

最初は症状緩和のための薬の処方、酸素療法を行い、家で看取る方向で考えていました。
しかし採血の結果、著明な貧血があることがわかりました。
癌の進行で状態が悪くなっているのではなく、長い間少しずつ出血して徐々に貧血が進行していたので症状が強くなっていたのです。
輸血を行えば症状は改善すると考え、とりあえず「楽になるから」と説得し、病院での輸血を勧め、なんとか承諾してもらいました。
しかし乳がんそのものの治療はしたくないとの気持ちは変わりませんでした。
このままでは、また貧血が進んでしまいます。
治療をせずに輸血のみ続けるというのは、血液がんでなければあまりされないことです。
毎週訪問してクリニックとの信頼関係が築かれつつあったので、2度輸血をして少し症状が緩和されたところで専門病院受診を再度勧めました。
そして訪問開始後2カ月したところでようやく自分の病気と向き合うべく精査、治療目的で病院を受診することになりました。

治療開始そして希望へ

病院の医療チームは素晴らしい対応をしてくださり、CTなどの検査を経てAさんに治療を納得してもらいました。
最初は薬による治療を行いましたが、副作用に悩むこともありました。
その後、薬の変更により、副作用はなくなり、効果が現れはじめました。
腫瘍は目に見えて縮小し、出血もなくなりました。
Aさんに笑顔が見られるようになり、前向きな気持ちが訪問のたびに伝わってきました。
その間にお孫さんが生まれ、Aさんはもっと生きたいという気持ちに変わっていきました。
数ヶ月が経ち、体調は驚くほど改善していました。
苦痛はなくなり、体力も回復し、何よりも精神的に明るくなっていきました。
家族と花を見に行ったり、好物のラーメンを食べに行ったりも出来るようにもなりました。
クリニックのスタッフ、訪問看護師さん、ご家族、みんながAさんの回復に驚きと喜びを感じました。

そして未来へ

訪問開始から1年経ち、外出も普通に出来るようになったため、訪問診療は終了とすることになりました。
まだ病院への通院治療は続きますが、最近のがん治療の進歩は目覚ましいものがあり、完治も夢ではないかもしれません。
お孫さんのためにも、まだまだ元気でいて欲しいと心から願っています。

おわりに

今回の経験は、がん患者にとって希望があることを教えてくれます。
がんと診断されることは恐怖ですが、動けなくなって訪問診療を考える前に一度病院を受診して、きちんとよく診てもらうことが大切です。
私もかつては病院でがんを治療する側の人間であったので、治療の素晴らしさを再認識しました。
このブログを読んで、がんと診断されたものの治療を悩んでいる方が、一歩前進するきっかけになれば幸いです。

芳賀 紀裕
この記事の執筆者
あい太田クリニック 院長

芳賀 紀裕 (はが のりひろ)

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