2021.05.02

【訪問診療 体験談8】家族には、私の溌溂とした家での姿を残したい 〜半日前に病院に戻り、旅立ちました〜

小林さんは五十代半ばの女性。

 

私たちのクリニックで拝見している患者さんの中ではかなり若い方に入ります。

 

卵巣がんで、大掛かりな手術を受けてから三年。

 

その間も抗がん剤治療を受けてきましたが、残念ながら私たちが拝見した時には、局所再発、肺、肝、リンパ節転移がみられ、また腸閉塞気味で、食事も十分にとれず、頻回の嘔吐がみられていました。

 

中心静脈栄養用のポートが挿入されていて、かなりの栄養がそのポートから点滴として投与されていました。

 

そんな状況でしたので、ご本人もご主人もこれ以上の抗がん剤治療は望まず、とりあえずの自宅退院を希望され、あい太田クリニックに在宅での主治医の依頼が来たのです。

 

退院調整会議から退院まで

 

退院調整会議に伺うと、ご主人はすでに決心されていたのでしょう。

 

ご自宅で看病すること。その時が来たら、自宅で看取ることも辞さないこと。などを淡々と話されました。

 

ただ、お子さんたちはすでに自立されてほかの場所に住んでいるので、基本的にはご主人が仕事をしながら、奥さんの面倒をみることになり、その点が心配だとのこと。

 

それでも職場が近いので、昼休みにも自宅に戻って様子をみることはできるので、何とか自宅に戻したいとのご希望でした。

 

わたしたちも同じような状況の患者さんを何人も診てきましたので、ご自宅での療養は何とかなるので、できるだけ早く退院していただいたほうがいいと申し上げました。

 

調整会議が終了して、小林さんのところに面会に行くと、ベッドに横になってぐったりされていました。

 

嘔吐が続いていることと微熱があって、体調は良くないこと。

 

ただ、退院した時には中心静脈ポートからの投与は夜間だけにしてほしいとの依頼をされました。

 

昼間にできるだけ動きたいからとのことでした。

 

退院調整会議で得た情報、小林さんのご様子から、小林さんは気丈に頑張っているけれど、そんなに長くはないだろうということ、吐き気がおさまったり、熱が下がるまで待っていては、退院の時期を失してしまうだろうことを再度感じました。

 

ですから、ご本人には、いつでも自宅で受け入れる準備はできているので、できるだけ早く退院されたほうがいいのでは、とお伝えして、病室を後にしました。

 

退院調整会議が終わって、クリニックで退院日決定の知らせを待っていたのですがなかなか連絡がきません。

 

今までの経験から、微熱が下がるのを待ってとか、吐き気がなくなるのを待ってとかしていると、結局退院できずに病院でお亡くなりになってしまう方も少なからずいらっしゃったので気が気ではありませんでした。

 

途中、病院に電話をしてみるとやはり吐き気がおさまらないので、退院を決断できずにいるとのこと。

 

これは無理かもしれないなあと半分あきらめたところで、退院調整会議からちょうど二週間で退院することになったとの連絡を受けました。

 

ほっと胸をなでおろしながら、退院の日に早速お宅に伺いました。

 

やはりご自宅で拝見する小林さんの表情は明るく、ベッドの上で起き上がって私たちを迎えてくれました。

 

トイレも何とか自分で歩いて行けるとのこと。ただ、微熱は続き、吐き気、嘔吐も続いているとのこと。

 

症状は消えないけれど、その症状に何とか耐えていることができたので退院したのだと感じました。

 

自宅でやり残したこと

 

腸閉塞の状況でしたので、嘔吐、吐き気を防ぐために鼻から胃の中まで管を入れてたまった消化液を出すと楽になるかもしれませんと提案すると、

 

もう少し待ってほしいとのこと。

 

また点滴は夕方につないで、朝まで点滴液を流し、昼間は抜いてほしいとのこと。

 

内容ははっきりわかりませんでしたが、片付けなければいけないことがあるとのこと。

 

だから昼間は胃管や点滴がつながっている状況にしてほしくないとのこと。

 

自由に動きたいとのこと。

 

なるほどなあと思いました。

 

まだまだお若い小林さん。やりたいことは山のようにあるでしょうし、また死期が近づいているならやっておかなければいけないこともたくさんあるに違いありません。

 

病気の治療をしている間は、その治療に全力で当たっていたに違いありません。

 

とても自分がこの世からいなくなることを認めることもできなければ、想像もできなかったでしょう。

 

ですから自分の人生をしまうためにしなければいけないことなどに思いがいたる時間も余裕もなかったに違いありません。

 

それが、このようになって、自宅に帰る状況になったこの時に、たくさんの想いが沸き上がってきたに違いないのです。

 

しかしながら、翌日に伺ったときには小林さんは…

 

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