緩和医療で医療従事者がよく用いる言葉 -「予後」とは

院長ブログ

芳賀 紀裕
あい太田クリニック 院長
芳賀 紀裕

 

今年も残りわずかになってきました。
残念ながらコロナ禍は終息することなく、今後はどのように感染の波と付き合っていくか、いわゆる「with コロナ」ということになっていきそうです。
そんな中、寒くなる年末に向かい、第8波が来て感染者は増加し、医療現場でも感染したり濃厚接触者となったりしてスタッフの欠員があるなかで、多くの患者さんに対応する必要があり、悪戦苦闘しております。

 

そして年末は、在宅医療の現場では、最後となるかもしれないお正月に向けて家に帰りたいという患者さんが増えてくる時期でもあります。

 

 

「予後」という言葉の意味と表現

 

医療者が癌の患者さんに対してよく用いる言葉の一つに「予後」というものがあります。

今後の医学的な経過についての見通しのことで、癌の終末期においては「余命」すなわち、「どの程度の期間生きていられるか」ということを意味します。

そして「数ヶ月」、「半年」などと医師から伝えられると思います。

場合によっては「年は越せないかもしれません」、「桜を観るのは難しいと思います」などの表現もしばしば使用されます。

 

予後については、食欲などの症状や、採血データを元に科学的に予測する手法(短期的にはPPI、中期的にはPaPスコアなど)がありますが、多くは担当医が自らの知識や経験で主観的な考えを伝えることが多いと思われます。

そして、予後の予測の多くは、ご家族の気持ちを汲んでのこともあり、長めになりがちであると言われています。

 

 

「自宅で過ごす」予後の本来の意味

 

 

心不全や脳梗塞後遺症などの患者さんは、徐々に悪くなっていき最期を迎えますが、癌の場合は急激に状態が悪くなっていくことが多いのが特徴です。

元々かなり状態が悪く余命が幾ばくもない、という十分な説明が、病院からご本人やご家族に対して行われてから家に戻った場合は、在宅看取りの覚悟もでき、もしくは希望されて自宅に戻っているので、「自宅で看取れて良かった」となることが多いと思います。

しかし、ある程度安定した状態で在宅移行した場合は、急激に悪化した際に、ご家族には看取りを受け入れる余裕がなく、パニックに近い状態になってしまう場合もしばしばあります。

当然、病院に行ったほうが良い場合もあるのですが、現実的には病院でできることは少なく、最期は在宅医療で対応する、ということは多いです。

 

本来、家に戻りたいという希望は、家で亡くなりたいわけではなく、「家で生きたい、暮らしたい」からです。

そして不思議と家に帰ると、病態が奇跡的に良くなることもしばしば経験します。

住み慣れた自宅でご家族との時間を有意義に過ごすことに大切な意味がありますし、また介護力の面ではご家族に大きな影響を与えるので、最終的には病院でお別れのときを迎えることになってもいいのかもしれません。

しかし、在宅で多くの方を看取ってきた経験から、住み慣れたところでご家族に見守られながら人生の最期を迎えるのは、なんともいえない良さがあります。

特にコロナ禍で病院での面会が制限されている状況ではなおさらです。

 

病院から戻ってくるとき、病院の担当医からはいろいろな説明を受けると思います。

ですが実際のところ、「治療はもうない」「予後はXXぐらい」といったことのみ聞いて退院してきたと話す方が多く、「状態が悪くなってから亡くなるまでの経過」を理解されている方は、ほとんどいません。

「緩和治療」は、診断のときから始まると言われていますが、現実的にはまだ十分なされていない場合が多いと思われます。

コロナ禍で、病院との連携のあり方をリアルに共有する場がなかなかありませんが、「病院から在宅にスムーズに移行できるような関係」を構築する必要があると考えています。

 

お正月は日本人にとって特別なときです。

年末が近づき、家に帰りたいという方も多いと思いますが、あい太田クリニックでは、できるだけそうした望みを叶える体制を取ってまいります。

病院に緊急で運ばれるとき、それまでの情報が大事であるように、急に在宅への移行が決まり良い形で在宅診療に入るときにも、今後の方針や介護の支援体制などの情報は不可欠です。

この辺りの連携のあり方も、とても大事だと考えています。

 

 

私の2022

 

今年は院長に就任したこともあり、今までよりさらに充実した日々を送ることができました。

増え続ける在宅患者さんに対し、いかに円滑に訪問し診療していくかが、今年の最大のテーマだったように思います。

患者さん側と訪問診療チーム側の、双方がなるべく納得のいく形で診療を行うために、試行錯誤の毎日でした。

予定の時間に伺えなくても、理解を示して下さった患者さんやご家族の皆さん。いつも本当にありがとうございます。

そして日々、頭を抱えながら訪問予定を組み込んでくれた職員の皆さん、訪問チームの皆さん。いつもありがとう。

来年もまた一緒に頑張りましょう!

 

 

 

そういえばこの秋は、過去に私が書いた「柿胃石」に関するブログがマスコミの目に留まり、いろいろな情報番組やニュースサイトからの取材を受ける…という珍しい連鎖も経験できました。

 

 

 

 

プライベートでも、山に登ったり マラソン大会に出場したり、数々の世界的スポーツイベントに熱狂したりと、振り返れば様々な出来事が思い起こされます。

皆さんにとって、2022年はどんな1年だったでしょうか。

 

各医療・介護関係の皆さまにおかれましては、本年も大変お世話になり、ありがとうございました。

少し早いですが、皆さま、良いお正月をお過ごしください。

来年も引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

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